日々徒然 

5分で書ける程度の戯言

昨日もサボってしまいました #俺たちの菅モネ

「も」!?

 

   今日も!?

 

   ですか!??

 

 

   違います、ちゃんと書きます、遅刻しましたが。

 

   今日"1221"は「遠距離恋愛の日」

   遠恋する恋人同士にエールを送る日なんですって、よ?

 

   なんだろそれ(笑)

 

 

 

 

 

                   --------キリトリ線--------

 

「なんですかそれ、」

   と。

   永浦百音は愛らしい(はずの)眉間にシワを寄せた。

「朝の中継と、どう関係あるんです?」

   ここ数日、記録的な大寒波に覆われた日本列島のど真ん中、東京の某テレビ局内である。

   なんとなく予想出来た反応だったなと、神野マリアンナ莉子は、用意しておいた苦笑いで口元を歪めた。

「人肌恋しい感じだからさ、恋人と遠く離れて~~も2年? 長いよね!??  この寒空に恋人と会えないって言うのはいかがなものなのかなって思って」

「それ、お天気コーナーの原稿とも中継の話題とも全然関係ないですよね?

   だいたい、寒かったのは昨日までで今朝の最低気温は3.9度、日中は13度まで上がってだいぶ暖かくなりますよ。週末からの連休も平年並みかそれよりも高い予報。そんなに人肌恋しくならないです」

   莉子は百音の返答に、やや芝居がかった溜め息を吐く「23歳のクリスマス、恋人という存在がいたら間違いなく楽しい頃なんだけどなぁ」

   対して百音は呆れ気味に「楽しいですよ、年内にはお休みいただけませんでしたけど、」

「年明けには会えるの?」

   莉子の問いに、百音は口を引き結び、つぶらな瞳をきょろんとさせる。

「あぁもう全くぅ~」

   感嘆の声を上げる莉子に「なんで莉子さんがそんなに不服なんですか」

「だぁってぇ」

   ミーティングデスクに突っ伏して残念がる莉子を見つめ、ふふふと笑う百音の脳裏に森林組合の面々が浮かぶ。

 

 

『そうですか、そんなことが』

   電話の向こうで菅波が微笑むのが伝わる。

「全く、自分で話をふっておいて勝手にがっかりしてるんだから、困っちゃいます」

『…………』

「? ん?」

『、いや』

「……、先生」

『ん?』

「いま眉毛掻いてるでしょ」

『え?』

   自分で気づいていなかった様子だ、百音の"千里眼"に今度は目を剥いてる——

   他人ががっかりしてるって言うのに、あなたはどうなの? と尋ねようとして。

   躊躇って。

   だって、普通だったら年末年始、少なくとも1週間くらいは休みが取れそうなものなのに、気になる患者さんがいるから登米から離れられない。

   いや、百音だって同様だ。

   元旦の朝まで仕事、午後にやっと新幹線に乗る。そして1月3日の午後にはまた上りの電車に乗るのだ。

   やりくりして。

   やっと半日、会えるかどうか……

「がっかりしてますよ、自分のシフトに。あと一日でもあれば、登米まで行かれたかもしれないのに」

『いや、僕の方こそ』

「しようがないです、先生は~"そういうふうに"したくてそこにいるんでしょう?」

   そういうと、ふっと力を抜いたような呼吸が返される。

「それに、クリスマスプレゼント」

『!ぁ、 届いた?  あ、いえ、それを免罪符にしようとは思ってないよ?』

「帰ってきて、菜津さんから受け取って」

『、どうかな?  好みも聞かないで送ってしまって』

「ちょっとまってて。まだラッピングが~勿体なくて」

『!??』

「だって! 開けなくても分かりますよ高いものだってことぐらい。この色の箱、私だって知ってます」

   百音はスピーカー機能にしたスマホをかたわらに置くと、ミントグリーンの箱にかかったリボンを(何故か)慎重に解いた。

   スピーカーから菅波の声が聴こえる。

   どうかな、そろそろいいと思うんだ年齢的にもそのくらいのブランドの、持っていてもいいと思うし、あ、あの、同じ素材の~ハート型のとか~~宝石(いし)が付いたのとか、いろいろあったけどなんとなく

『なんとなく、それがいまのあなたに一番似合うんじゃないかと思って』

   一気に喋る声を聴きながら、百音は柔らかい光を放つその小さな金色の粒を眺める、手の中で上げたり下げたりひっくり返したりしながら。

ビーンていうんだそうです。生命の始まりって言う意味らしいです。まだ、芽が出ないけど、でもたくさんの可能性が詰まってる気がして、あなたにはこれだと』

   気に入ってくれるといいんだけどと。菅波はまた眉を掻いている。

 

   大丈夫

   あなたの投げるものなら

 

「すごく嬉しい」言いかけて、百音は抑えきれずに笑った「先生のなかの私は、こんな可愛らしい形してるの、とっても嬉しい」

『ずっと可愛らしいですよ、でもそれだけではないんです』

   受け止めようとする"器"や、分け与えようとする、あるいは寄り添おうとする力が……

『その小さくて張りつめた粒みたいに、詰まっているような気がするんです、忘れないで欲しい…可能性の塊だって』

 

   たまに尖ったチョイスになってしまうけど、菅波のセレクトは外したことがない。

   いつも菅波が示してくれるその形を目指している自分がいる。

   会えなくたって、百音は自分が思っている以上に菅波から愛されていることに気づく。

「…………」

   だから、尚更会いたい。

『、ん?』

「ううん、~~付けちゃった」

『どう?』

「こういうの、彼氏が付けてくれるものじゃないですか」

『ぇえ?』

「でも付けちゃった自分で。お礼に今度見せに行きます」

『今度?』

「はい」

   電話の向こうで菅波が頷いた『待ってる』

 

 

 

 

 

 

 

 

   翌日は土曜日

   日曜日と、振替休日の月曜日

 

   火曜日

   中継コーナーの衣装を少しだけクリスマス仕様にした百音の襟元が普段よりも広い。

   ミーティングデスクを囲みながら、恋人からの贈り物のお披露目に~~自慢げに微笑む百音と、にやにやがとまらない莉子の姿があった。